日本郵便

日本郵便は、民営化から間もない2007年10月、
宅配便業界第3位の日本通運と業務提携を締結した。

この事業統合の狙いは、
全国の郵便局ネットワークを生かし
企業向け配送には強い日本通運と組むことにより、
圧倒的なシェアを誇る
ヤマト運輸や佐川急便と対抗することだった。

2010年7月にペリカン便とゆうパックが統合され、
現在の郵便事業「ゆうパック」となったが、
その直後にシステム統合の影響で大規模な遅配問題が発生。
これがEC事業者の荷主離れを引き起こす原因となり、
赤字続きになるなど苦戦を強いられてきた。

しかしここ1、2年で次々と新たな施策を打ち出している。
先日、日本郵便は東京ドーム級の広さの
大規模な物流局を全国20カ所に新設すると発表。
郵便や宅配便の区分け作業を同局で集中処理し、
配達にかかる時間を短くする。

また、宅配事業の強化に向けて
全額出資の子会社「日本郵便デリバリー」を設立したと発表。
2015年の株式上場を目指す日本郵政は、
需要の伸びが見込める物流事業を、
郵便事業に並ぶ業務の柱に育てる考えだ。

価格とサービスレベルの鍵を握る巨大モールAmazon

巨大モールAmazonとの関係を軸に
配送事業者の取り組みを見ていくと面白いことがわかる。

佐川急便は、Amazonでの業務受託を始めたのを機に
B2Cサービスの改善に力を入れてきたが、
徐々に業績が悪化したためAmazon業務から撤退した。

一方、2013年にヤマト運輸がAmazonの業務を受託した直後、
お歳暮の時期(いわゆる年末商戦期)は
急激に小口の荷物が増えたことから、
配送が遅延したり、破損などのトラブルが多発した。

やはり、Amazonの発送数量は
想像以上に他の業務を圧迫したといえる。
巨大モールの甘い汁とサービルレベルの維持は
トレードオフの関係となっているといえる。

価格とサービスレベルの狭間での奮闘

最近ヤマト運輸は法人顧客に対して
一斉に運賃の引き上げを要請することを選択した。
消費者の負担が増す可能性は高く、
ECの購入者としては喜べない状況でもある。

EC事業者側から考えると、
「送料無料」などのキャンペーンは難しくなる。
キャンペーンを継続していくなら、
商品の値上げの検討、広告費用の削減など、
事業全体を見渡したコストの見直しが必要となってくる。

配送業者側では、値上げするヤマトに対して、
佐川急便や日本郵便にチャンスが回ってくることになり、
さらに3社間の競争は激化するだろう。

送料を購入者が負担しないという構図はどこまで続くのか。
業界のパワーバランスは、価格とサービスレベルの狭間で
行ったり来たりを繰り返しつつ、
その落としどころを探っているのかもしれない。

「Eコマースコンバージョンラボ」より引用
http://ecclab.empowershop.co.jp/archives/2104