郵便のシングポスト(シンガポール・ポスト)が
物流事業に活路を見出している。

物流部門の売上高はこの5年で2倍へ拡大。
いまや全体の5割弱を占めている。

●バイエルCEOの物流改革
東南アジアでは海外ECサイトの進出がふえる中
物流大手が不在している。

そこで11年に就任したヴォルフガング・バイエルCEOが
最初にとりかかったのが、物流改革。

EC向け物流システムを構築する部門を設立し、
「海外配送のスピード化」という課題に着手した。

まずは独自の国際物流網を構築。
M&Aを通じ東南アジアや日本、オーストラリア、インドなど
世界22カ所に商品管理のための倉庫を確保した。

来年には巨大物流倉庫を国内東部に開設予定。
また東南アジアの主要6都市やオーストラリアでは
宅配事業もスタートした。

昨年5月には中国EC大手のアリババ集団と提携。
中国と東南アジアの運送網を結び、
効率的な物流ネットワークをつくり上げる。

中国からインドネシアへの商品発送にかかる日数は
2週間と、以前の半分以下となっている。

●国内外で受取場所をふやし、EC事業を支援
シングポストはオフィス街など国内約70カ所に
EC商品の受取設備「POPステーション」を設置。
多忙なひとり暮らしの人のニーズをつかんでいる。

日本でも楽天が日本郵便と組み、この春から
郵便局などに受取用ロッカーの設置を順次進める。

このようなEC商品を自宅以外で受け取る動きは
欧米でも拡大中だ。

さらに同社は3月9日、インドネシアの携帯電話
端末販売のトリコムセルと合弁会社を設立すると発表。
インドネシア国内に約900あるトリコムセルの店舗を
商品の受取場所に活用し、EC事業をバックアップする。

バイエルCEOは
「シングポストの強みは150年以上の郵便事業で
培った配達への信頼とブランド力だ」と語る。

先細りの郵便事業への依存から脱し、
国際的なEC物流企業を目指す戦略は
世界の郵便会社のモデルとなる。

「日本経済新聞電子版」より引用